コクヨグループのコクヨファニチャー株式会社がオフィス家具製造業界で初のBS25999認証を取得
日本最大の総合オフィスサプライヤーであるコクヨグループは1905年、当時一般的に使われていた帳簿の表紙を製造する店として創業。 その後、誰もがなじみのある文房具全般の製造・販売を開始し、オフィス家具の製造・販売へ事業を拡大していった。同社は継続可能な社会の発展を追求することを目的に、「商品を通じて世の中の役に立つ」という理念を掲げ、時代とともに多様化、細分化する顧客のニーズに応えたモノづくりを続けている。
そのコクヨグループの中でも、オフィス家具、建材を製造・販売を行うコクヨファニチャー株式会社(以下コクヨファニチャーまたは同社)がパイロット会社として選ばれ、BCP(事業継続計画)策定への取組みを開始した。 そして2008年9月に国内のオフィス家具製造業界では初となる事業継続マネジメント規格BS25999の認証を取得した。
認証の範囲となったのは、大阪市東成区の本社オフィス、品川オフィス、霞ヶ関オフィス、三重工場、芝山工場の5事業所及び三重、長野、千葉に位置する4つの配送センター の合計9サイトでのオフィス家具・建材の製造、出荷および顧客対応業務である。
約1年を要したBCP策定から認証取得までの過程について伺った。
→ 厚さ12センチ
規格/スキーム
BCMS:BS25999
写真はコクヨファニチャー株式会社本社
約1年かけてBCPを策定
「コクヨファニチャーの事業が中断されると、被災したオフィスを移す企業や自治体、机やいすを必要とする学校などに予定通り商品が提供できなくなり、社会に大きく影響を及ぼすことになる。」新潟中越地震などの教訓にもあるように重要業務の中断が取引先や顧客を含む事業者に与える影響は計り知れない。 これを機にBCMの重要性についての認識が高まった。 また同社では過去に協力工場(生産委託会社)で災害が発生した際、危機管理マニュアルや手順書が無く、復旧へ手間取った経験があったこともBCP策定の後押しとなった。
生産管理部部長の高木照久氏は事業継続の重要性を日常の出来事に置き換えてこう話す。「出張時に空港へ移動する際にバスを利用しています。 道路の渋滞時には、乗車前にアナウンスがあり、渋滞箇所、状況についても繰り返し案内されています。また、迂回ルート、到着予想時間も乗客に案内されます。 これは同区間のバスを運行するバス会社が事業継続のための対策を講じており、現場レベルまでしっかりそのBCPが浸透しているということです。」
コクヨファニチャーのBCP策定はまず重要な商品やサービスが中断した場合の影響度を分析し、「重要業務」を洗い出すことから始まった。 市場での流通量が多く、自然災害などで多くの企業が被災した時に供給が必要な商品やサービスを重要業務と位置づけた。
重要業務の洗い出しの次には、それぞれについてBIA(Business Impact analysis:事業影響分析)、財務的影響、風評による影響などを計り、各リスクの優先順位、RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)、行動計画を定めた。本社オフィスが被災した場合は、代替事務所を開設し、業務を再開する。 また商品供給については倉庫の在庫確認状況次第で、代替の商品を用いてサービス対応するなど洗い出したリスクに対し行動計画を定めていった。
このように実施された同社のBCP策定はリスクや影響度の洗い出しと行動計画の策定で約1年かかり、出来上がったマニュアル「事業継続マネジメント資料編・記録編」は厚さ12センチに及んだ。
→ 組織の文化へ
繰り返しの訓練でBCMSを組織に文化として浸透
ここまで苦労して策定されたBCPも、インシデント(災害)や事業中断の事態に直面した際、計画通りに実行されなければ意味がない。 それには、平時に行われる演習が大切である。
事前の準備なしにその場で刻々と与えられる被災状況のシナリオに沿って何チームかに分かれて対応するという訓練が実施された。 これはBCPの実際的な訓練として一般に採用されているシナリオ非提示型の訓練である。 「大阪で震度7の地震発生、被害あり」と想定し、被害状況を確認。 参加者は人命救助や二次災害防止、安否確認など事業継続のための初動対応の考証を行った。 しかしこの訓練を受けて、「チームによって優先順位は初動にばらつきがありました。役割分担を決めていたはずなのに一つの情報に何人もが集中し、他への対応が手薄になるなどの大きな混乱が生じた。」(企画部副部長 山本淳一氏)その後早速レビューが行われ、マニュアルに頼ることなく日常から災害時に各人がとるべき行動を頭に入れておくことの重要性、BCPの必要性を改めて認識することとなった。
このひと月後には、発生率が高いと予想される災害を想定した被災シナリオをもとに、社内の各部門が果たすべき行動手順を定めた「行動計画書」にそって行動する訓練が実施された。 同社ではこのようにインシデントシナリオによるウォークスルー(演習)型の訓練とレビューを繰り返し実施し、BCMを組織の文化に浸透させていった。
「BCMを全社員へ浸透させるのは大変でした。 各部門のリーダーを会議で教育し、リーダーから事業所内の従業員に対して教育を行い、水平展開を図りました。 朝礼、事業計画発表会や内部監査を通じても繰り返しBCPについて話しました。」(高木部長)
審査に際して、特に対顧客への活動を行う部門において、社内各部門との情報交換、管理情報の報告、情報の受け方に至るまでのプロセスがきめ細かく想定されている点が高く評価された。誤った情報を排除し、必要な情報が正しく届くよう、その内容・形式、授受方法等、記録様式をも含めて検討がなされている。 これは繰り返し演習を行い、レビューを行った成果といえる。
→ 信頼と発展
サプライチェーンへBCPを展開 ステークホルダーの信頼へ
BS25999認証に関しては、BCP策定の段階では認証の取得までは考えてなかったが、コクヨグループの理念をステークホルダーにコミットメントを示す手段として、取得が決定した。 同社の経営陣のBS25999認証取得への強いコミットメントがあったことも特筆すべきところである。そして、BCP策定から1年後の2008年9月、BSIジャパンの審査を受け認証取得した。
「今や、BCPを策定しているかどうかは国際取引においても重要な要素となっており、これからさらに海外での事業を拡大する事業所にとっては有利になると思います。 また、CSR(企業の社会責任)の一環としても、BCPの取り組みについてお客様や株主に対して方針を明示することが出来たことも認証取得のメリットといえます。
今後は、従業員の理解度を確認するために実施したアンケートで、BCPの理解が充分でないと回答した2割強の従業員に対する教育が課題です。 またBCMSのモデルとなったコクヨファニチャーからコクヨグループの販売会社、協力工場などへの事業継続への意識の浸透を図り、サプライチェーンでの一環したBCPも視野に入れた体制を整えたいと考えています。」(高木部長)とサプライチェーンマネジメントにも焦点をあてたBCPのさらなる発展を目指す。
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